本書は、江戸時代に「奥州随一の湊」と称された石巻の江戸時代から昭和時代までに発行された絵図と地図を中心に編集した「石巻古地図散歩」です。石巻は明治22年に石巻村・門脇村・湊村の3村で町制施行。昭和8年、単独で市制施行、同24年、蛇田村、山下を合併、同30年代から42年に2町2村(蛇田村・荻浜村・渡波町・稲井町)と合併、平成17年の6町との大合併などを経て今日に至ります。
今回、東北大学図書館、仙台市立博物館などをはじめ石巻市内の旧家と団体の多大な協力で、その秘蔵の地図の中から厳選して初めてカラーで紹介することができました。石巻の辿った政治的・経済的変動、度重なる火災と風水害、チリ地震・東日本大震災の津波などにもめげず、よくもこんなに資料を残してくれたものだと思います。改めて関係者の努力に敬意を表します。
本書から、改めて今日の石巻市に至るまでの地域の歴史と地理をよみがえらせて、タイムマシンに乗ったような気分で、これからの地域の未来を描き直すことを楽しんでもらいたいと思います。
最後になりましたが今後も資料の発掘に努め、IT技術や印刷技術の更なる進歩を待って次回に一層の前進、充実を期したいと思います。
平成29年5月
「石巻アーカイブ」地図研究会 邉見 清二
震災後、ある本の編集のため資料探しに邉見先輩を訪ねたところ、「その資料は津波をかぶってダメになった・・」と聞いて愕然としたことを思い出します。震災で自宅の一階にあった資料は、ほぼ全滅だったとのこと。もちろん、今回の震災は、尊い人命や家や街並を無情に奪ったもので、被災地でさまざまな貴重な文化財、資料等も失われ仕方ないとはいえ、とても残念な思いを感じました。
幸い無事であった資料を見ているうちに、この貴重な資料等でしっかりと後世に伝えられるものができないか、そしてふるさとの歴史や、今住んでいる町に興味をもって語り継ぐ人材を育てられないかと考えはじめたのが、この本の原点です。
石巻地方は歴史的に古い町であるためか、郷土史家や歴史に興味を持つ人が多くいてそれぞれ資料を収集しています。そこで、先輩に声がけしていただき集まっていただいたところ、私が考えている以上の資料が出てきて驚きました。それらは自費でオークションや骨董商から購入して集めたもの、旧家の歴史として震災をくぐり抜けたもの、旧家から譲り受けたものなど、諸先輩方の苦労には頭が下がる思いと同時に何とかまとめて残すべきとして編集に取りかかりました。
今回、厳選した13枚の古地図・絵図・広告を解説付きで掲載しました。地図や絵図、そして広告からはその時代の繁栄や衰退がみてとれる一方、現代の町の基盤となる礎がそこから始まったと読み取ることもできました。この本を手に取られた方が、ふるさとを愛する何かを読み取っていただけたら幸いです。
最後に、貴重な資料等を提供していただいた「石巻アーカイブ」地図研究会の鈴木紀男氏、菊田貞吾氏、本間英一氏、邉見清二氏、ご協力いただいた浅野太一郎氏、仙台市博物館、東北大学図書館、さらに出版にご協力いただいた石川敏氏。
発刊にあたり関係各位に心より感謝申し上げます。
「石巻古地図散歩」企画・編集
小野寺 豊